東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)266号 判決
一 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決を取消すべき事由の存否について判断する。
原告は、審決が、引用例に「街路樹の周囲に内側に係止部を有する縁石と根囲石を敷設し、分割金蓋を前記係止部に嵌合係止させる構成」が記載されていると認定したのは誤りであると主張する。
成立に争いのない甲第三号証の二(引用例)、同号証の三(引用例八四頁の
引用例は、昭和二七年に財団法人東京市政調査会から刊行された井下清著「街路樹」を改訂して、昭和三二年六月に全国市長会から井下清著「街路並木」として刊行されたものであること、昭和二七年の前記「街路樹」の八〇頁と八一頁には、引用例の八三頁と八四頁と同じ図面や記載があるところ、引用例の八三頁及び前記「街路樹」の八〇頁下段の「図版8」の欄の説明には、「樹木植栽位置根囲石の上に鉄蓋をかけ土の露出と踏固められることを防ぐ。」との記載があり、この記載からみても、「縁石もしくは根囲石の上に鉄蓋をかけること」は、この種考案の構成としては、本件考案の出願前に普通に行われていたことであつたことが窺われること、また、引用例の八四頁(別紙図面(二)参照(〔編註〕省略))の
引用例に示された右の事実を参酌して、特にその八四頁の
この点、原告は、引用例の
更に、
以上の検討から明らかなように、引用例の八三頁及び八四頁の各図面からみても、引用例には、街路樹の周囲に内側上部に段部を設けた縁石と根囲石とを敷設し、かつ、透模様を施すとともに街路樹が通る孔を設けた分割金蓋を前記段部に嵌合係止させて、この分割金蓋を街路樹を植えた仕上り地面より上方に位置するようにした街路樹の保護装置の構成が示されているということができる。
したがつて、審決が本件考案を、その出願前に頒布された引用例に記載された事項と同一であり、実用新案法第三条第一項第三号の規定に違反して登録されたものであるとしたのは、相当であり、審決には、これを取消すべき違法はない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註その一〕 本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。
1 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「街路樹の保護装置」とする実用新案登録第一〇三六〇〇八号考案(昭和四四年四月二一日出願、昭和四九年四月六日設定登録)(以下、「本件考案」という。)の実用新案権者であるところ、被告は、昭和五三年二月一五日、特許庁に対し、本件実用新案登録の無効審判を請求し、同庁昭和五三年審判第二〇八一号事件として審理されたが、昭和五五年七月一八日、「登録第一〇三六〇〇八号実用新案の登録は、無効とする。」との審決がされ、その謄本は同年八月四日原告に送達された。
2 本件考案の要旨
街路樹Tの周囲に段部1aを有する縁石1を敷設し、かつ、透模様4を施すとともに街路樹Tが通る孔3を設けた分割保護網2、2を前記段部1aに嵌合することを特徴とする街路樹の保護装置(別紙図面(一)参照)。
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
図面 (一)
<省略>